満洲2:古い映画『戦争と人間』を見た。あまりに露骨なプロパガンダ。俄かには信じられないが、こんな映画が流行っていた時代もあったようだ。
『世界史のなかの満洲帝国』(宮脇淳子著、PHP新書)を少し前から読みはじめた。
それまでも結構こんを詰めて読書しており、この本もササっと読めるようなものではないので、小休止、それで今日も映画『戦争と人間』の続きを見てしまった。
『戦争と人間』第三部。
これはのっけから南京事件。
南京大虐殺と言われることもある事件から始まる。
(殺された人の数が)「30万人にものぼると言われている」というナレーションが流れ、衝撃的な写真が画面に映し出される。
それを見て私は、「ああそうか、この映画はやっぱりそういう映画なのだな」と思い、もう見るのをやめよう、と思ったのだ。
南京事件については昔けっこう読んだ。
30万というのは暴論で、私としては3万でも多すぎる数字だと思っている。
写真についても、そもそもそうした残虐な写真が南京で撮られたものであるかどうか、いつ撮られたのか、など、検証が必要なのは当然のことだ。
結局今日、三部作すべてを見たことになった。
最初の二部は雑用をしながらスマホの小さな画面で見たりもしていたので、あまり内容が頭に入っていない。
最後の第三部、これは今日ちゃんと見た。
第三部は戦闘シーンが多い。カラー映画だが、時に白黒の映像も混じる。
どうやらその白黒映像は実際に当時戦場で撮影されたものらしい。
この映画は1970年頃の日本映画だが、日本軍と日本軍人の描かれ様がひどい。
かつて実際に戦場に行った人たちが見たら、悲しくなるような、そんな酷い描写のされようだった。
「共産主義者の学生たち」は、良い人間、として描かれている。
日本軍は捕虜を残虐に殺す、しかし支那の八路軍は、正義の味方、捕虜にも親切、そんな風だった。
長いドラマの中で時折そうした露骨なプロパガンダ的な、奇妙で不快な場面があるが、実際の記録映像もあって、見て良かった。(楽しかったとかおススメとか、そういう意味ではない)
1970年頃、こういう映画が、日本の「豪華キャスト」を結集してつくられた、そして多くの人がこの映画を見たのだなあ、と。実際に満洲方面に行った元軍人がこの映画を見たとしたら、どんな想いを抱いただろう、あまりに理不尽に日本軍を、徹底的にこき下ろす描写。そこまで日本軍を日本兵を日本人を、嘲笑うのか。
映画の中で、軍部が米露の生産能力を示す数字を軽視する場面が何回かあった。それはそれで史実に基づくことだったのかもしれないし、そうでないのかもしれない。いずれにしろ、その場面が語りかけることは「事実を直視しろ」ということだ。「事実を直視しろ」とその場面は言いながら、他の所では事実無根の、ただ日本兵を断罪嘲笑するためだけの異様な場面を見せつける、その厚顔無恥に唖然とした。
そんな時代だったのか、1970年頃の日本は。
こんなひどい仕方で日本軍を日本の軍人を兵士を断罪し嘲笑するような、そんな時代だったのか。
映画だけでなくメデイアというのはいつの時代でも、誰かがスポンサーなわけで、「事実を直視する」ための手伝いをしてくれているわけではない。今も。
そんなことを思った。