『日本近代文学の起源』(柄谷行人著)を読んでいる。柄谷氏は誰にも似ていない、だからタイトルや小題を見ても内容を予測できない。読んでみるまで分からない。
この本のタイトルは、上にある通り、『日本近代文学の起源』である。
柄谷行人を読んだことがない人は、「文学?興味ねえよ」とか、「たんなる文学史でしょ!」「ジェネシス!進化論?」と思う人もあるかもしれない。
しかしこの本は、「文学」という狭い範囲の話ではない。
なんせ、オリジン、ジェネシスの話だから。
実に多くの著書・論考などが参照されているのだが、その一覧を見れば、その射程がどれほど広範囲に及ぶのか、想像がつく。
『文学論』(夏目漱石著)
『創作家の態度』(夏目漱石)
『「山水画」に絶望を見る』(宇佐見圭司)
『Changing Nature of Man』(ファン・デン・ベルク)
『判断力批判』(カント)
『情熱』(北村透谷)
『漢字御廃止之義』(前島密)
『余が言文一致の由来』(二葉亭四迷)
『近代小説の言語空間』(野口武彦)
『破戒』(島崎藤村)
『紀行文集』(柳田国男)
『武蔵野』(国木田独歩)
『透明と障害』(スタロバンスキー)
『死』(国木田独歩)
『身ぶりと言葉』(アンドレ・ルワロ=グーラン)
『妄想』(森鷗外)
『リアリズムの源流』(江藤淳)
『写生文の由来とその意義』(高浜虚子)
『坑夫』(夏目漱石)
『写生文』(夏目漱石)
『死後』(正岡子規)
『笑いの本質について』(ボードレール)
『私は懐疑派だ』(二葉亭四迷)
『ヨーロッパ文化の危機』(ルードルフ・パンヴィッツ)
『翻訳者の使命』(ベンヤミン)
『平凡』(二葉亭四迷)
以上が第一章「風景の発見」および第二章「内面の発見」での、いわゆる引用された著書・論考だ。
短いフレーズの引用まで数え上げればきりがない。
しかも上記のものは、第二章までのものだ。
この本は、本文が第七章まであるので、いわゆる引用は、全部でおよそ、上記の3・5倍くらいあると思われる。
こうして柄谷氏が参照し引用した著作・論考などを列記してみたが、なおこの本がどんな本なのか、推測することは難しいと思われた。
柄谷行人は、誰にも似ていないというべきか。
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