ブログ「偉人列伝」(小説・批評・文芸・映画・政治・

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阿部夏丸さんの短編小説『たにし』と『鬼やんま』を読んだ。小説集『オグリの子』に収録されている。

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吾妻鑑はたぶんここにあるだろう、そう思って私は本棚と物置になっている小屋に入った。

古典文学大系という古くて分厚い本だけでなく、マンガやら図鑑、絵画集のようなものまで、雑然と本棚にある。

カラーボックスにもいろいろと積まれていたりするのだが、使わなくなったちょっと大きめの白い机の上に、夏丸さんの小説集『オグリの子』が載っていた。

表紙には、赤い色と金色の馬の絵が駆けている。

 

私は吾妻鑑を探したが、見当たらなかった。

しっかり探してみたが、やはりない。

前にもそうやって吾妻鑑を探して見つけることができなかったな、と思い出し、諦めて小屋を出ることにした。

私は阿部夏丸さんの小説集『オグリの子』を再び目にとめた。

その本は、私の目に何度もとまっていた本だが、ちゃんと読んだことはなかった。表題作の『オグリの子』を読みはじめたことはあったはずだ。

読者アンケートのはがきが途中に挟まっていた。

初版は、1996年とある。

いつ手にしたのかは思い出せないが、その頃はたぶん、私がとても忙しく働いていた頃で、本を全くといっていいほど読まなかった時期だ。

仕事だけでなく、いろいろと忙しかった。

童話というものをほとんど読んだことがなかったし、今でも童話のことは知らない。

 

私は読んでみようと心に決めた。

ちょうど小林秀雄の『西行』を読み終えて、一文をほぼ書き終えた後だった。

次に読んでみようと思ったのだ。

小林秀雄は、鎌倉に住んでいた。

江藤淳は、小林秀雄の評伝を書いた。

その江藤淳も、鎌倉に住んだ。

小林秀雄の書いたもの、江藤淳の書いたもの、そのどちらにも鎌倉がよく登場する。

私は鎌倉に行ったことがあるが、それはちょっとした観光で、二三回のことだと思う。

小林秀雄が鎌倉にいた頃、文人が多く鎌倉に住んでいたようで、その交流が描かれたりしていた。

とても楽しそうで読んでいて楽しかった。

 

私は夏丸さんの小説を読んで、そんなことを思い出した。

夏丸さんの小説の舞台は遠くない。

小説の主人公は、夏丸さんの幼年期を想像させる。

小林秀雄が書いていた。

≪小説を小説だと思って読むな≫

(この言葉は山崎行太郎先生のツイッターで知ったのだが、私は急いでそのツイートを紙に書き写した。)

 

私は、小説の主人公を夏丸さんだと決めつけて読んだ。

夏丸さんは、私より10歳ほど年上だ。

だから遠くない所に住んでいながら、私の記憶に夏丸さんはなかった。

私が夏丸さんとはじめて話をしたのは、ちょうど上記したような多忙な時期だった。

その当時、すでに夏丸さんは児童文学の作家として有名な人だったから、私は緊張し、その緊張をどうにかして隠そうとしていたのだと思う、どんなお話をうかがって、私が何を話したのか、さっぱり思い出せない。

思い出せるのは、優しいクマのような印象だけだ。

 

最近私は、その優しいクマのようだった夏丸さんを見かけた。

はじめてお会いしてから、十年、二十年くらい経っただろうか、夏丸さんは、一生懸命に前進する、不機嫌なクマのように見えた。

私はその時、私自身がとても不機嫌だったし、その不機嫌の原因の一つは、猛暑だった。

とても暑くむしむしした日だった。

私の気分は混乱し荒れていただけだが、夏丸さんは、押し殺した怒りの表情をたたえながらも、真剣だった。

 

私は、夏丸さんの小説に登場する主人公たちが虫捕りに夢中になる姿を、その真剣な夏丸さんの姿に重ね合わせた。

夏丸さんは、真剣だったのだ。

 

夏丸さんの小説『たにし』や『鬼やんま』の舞台がこの近所だという確証はないが、私は勝手にこの近所だと判断して、子ども時代のこの近所の風景を思い出そうと努めた。

 

努めてみれば、少しは思い出すことができる。

当時メインストリートだった村の通りも、私が幼児だった頃はまだ砂利道だった。

その後その、村のメインストリートは舗装されたが道幅は狭い。

今ではそのメインストリートと並行した、舗装された立派な道路ができたので、かつてのメインストリートはもはやメインストリートではない。

私が小学生の頃にも、まだ森と呼んでいいような場所もあったし、夏丸さんの小説に登場する小川もあった。

急速に村の風景は変わったのだ。

それは高度経済成長期の、当たり前のことなのかもしれないが、この近所も、急速にその風景・景観を変えていった。

そして今も、それは続いている。

 

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